第17章 まだ妻を覚えているか!

その一言で、あたりは水を打ったように静まり返った。

近くの席にいた客たちは、互いに意味ありげな視線を交わし、好奇の目を向けてくる。

井上颯人もその異様な空気に気づき、気まずそうに顔を引きつらせた。

「祐衣、何を言ってるんだ?」

「彼女は悠子だよ。家の使用人なわけないだろう」

山田悠子もようやく我に返り、強張った笑顔で取り繕った。

「祐衣さんったら、冗談がお上手ですね」

「私の声があまりに平凡で特徴がないから、祐衣さんが勘違いしてしまったのかもしれませんわ」

福田祐衣は、目の前で山田悠子が必死に楚々とした様子を演じているのを感じ取り、胸の内で冷笑した。

(あら、そういう手で来...

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